[ドローン]がスキ!
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[ドローン]
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高宮悠太郎

慶應義塾大学 環境情報学部4年 東京都出身。
3年生の時に創設したドローンレースチーム-KART-で世界大会など国内外10の大会に出場。ドローンの楽しさを広げるため休学して教育ドローンの製作を株式会社ORSOで担当し、2017年4月「楽しみながら学んで、体験しよう」をコンセプトに教育アプリとドローンのセットになったDRONE STAR(https://www.dronestar.jp/)を発表。(以上は取材当時)

 慶應大学SFC。一際大きな荷物を背負い、片脇にドローンを抱えてこちらに歩いてくる人がいた。今回の主役、高宮悠太郎さんだ。大学のワークショップがきっかけでドローンに出会った彼は、その後ドローンレース世界大会に出場。現在は休学し、ドローンを活用した事業を始めようとしている。彼をそこまで突き動かしているドローンの魅力とは何であり、そんな彼が見つめているものとは何かを追った。

chapter 1

見えないのに、見ている

ドローンレースの様子を見せると、はじめはみんな「ゲームみたいだね」って言うんです。たしかにゲーム的な要素も含んではいます。でも、やってる本人から言わせてもらうと「スポーツ」に近い。
ドローンに取り付けられたカメラから映像が送られてきて、ドローン視点でレースを行うんですが、時速100km近いスピードで障害物を避けながらゴールまでのタイムを競います。視力とか、空間把握能力とか、フルに使うので非常にエキサイティングですよ。

— そんなに高速レースなのに、障害物とか見えるんですか?

見えないですよ笑 おっしゃる通り、速すぎますから。だから、記憶して、予測するんです。

— 障害物を、ですか?

そうです。障害物やコースを記憶しておいて、曲がるポイントや障害物の形状や色から、次にどんな障害物が待っているかを予測しています。

— 見えないのに、見てるんですね。

それ、いい言葉ですね笑 そうです。今、目に見えているものから次に何が起こるかのヒントを探すんです。カッコよく言うと、予知能力。僕はもともとウィンドサーフィンをやっていたんですが、風向きや波といった、目に見える限られた情報の中から、風を掴んで推進力を生むヒントを探さなければならない。その経験がドローンレースに活きてるんだと思います。考えてみれば、少ない情報からでも、それが何を示しているのかを抽出する力だったり、不足している情報をしぶとくリサーチする力って、ウィンドサーフィンとドローンレース特有の特徴というよりは、スポーツ全般、もっと言えば生きていく上で絶対必要だと思うんです。だからこそ、ドローンレースにのめり込んだのかもしれません。

見えないのに、見ている

chapter 2

身体感覚の拡張で産業が活性化する

— ここまでの話を聞いてると、ドローンって高宮さんの身体の一部みたいになってますよね。

確かにそうですね。カーレーサーが、自分の車がレース中に異常をきたした時、故障部を目で確認しなくてもわかってしまうのと近いかも。ドローンに意識が乗り移ってますから。自分がその場にいなくても、映像を参考に、ドローンの右羽付近には何があるか、とかわかっちゃいます。

— 自分の身体をどこにでも飛ばせる、ということですね。

ドローンがもつ特性ですし、同時に産業を活性化させる可能性を持ってますよね。
例えば、郵便や救援物資の配達のような規模だけでなく、人間がこれまでたどり着けなかった秘境にドローンを飛ばして、細部まで確認できる、とか。人間の活動範囲が拡大すれば、新しい産業が生まれるかもしれない。

— 発想次第で可能性がどんどん拡がりますね。

そこまで自分がやろうとは現時点、思ってるわけではないですよ笑 
でも、これはテクノロジーのあるべき姿だと僕は思っています。今はテクノロジー全体として、身体感覚の拡張がテーマになることが多く、例えば義手なんていい例です。今ではただの埋め合わせではなくなり、リアルで繊細な手の動きを再現できるようになっている。それによって、障害を持つ人が補助されるだけではなくて、これまでできなかった仕事ができるようになるわけで。当分はこういった良い流れが続いてくれると思います。ドローンはその一つの象徴だと思います。

chapter 3

肩書きとか、意味がなくなる

— 産業の話になったところで、改めて質問です。聞かれ飽きたかもしれませんが、ドローンって今後世間一般で使われるようになっていくんでしょうか。

きましたね、この話題笑 ここまできたら一般化すると思います…でも、日本は海外に比べて遅いでしょうね。

— 規制の問題ですか。

日本ではドローンが流行り始めた時に、立て続けに事件、事故が起こってしまいましたからね。誰もが怖いと思ってしまうのもわかります。規制が強化されてしまう一つの理由は、過剰に危険だと思い込んでしまう世間の雰囲気ですから。

— 手に負えないと一度感じてしまったテクノロジーほど、怖いものはないですよね。

だから、僕がドローンレースをやっているのはドローンのイメージを変えるため、というのもあるんです。エンターテインメントとしてのイメージを一般の人向けに拡げることができれば、ボトムアップ式にドローンが一般化されていきます。今の時代、すごい力を持った誰かが、決めつけたものを流行とするなんて風潮は時代遅れじゃないですか。本当にいいものは自分たちで判断して、使えるようにならないといけないと思ってます。

— なるほど。YouTuberのようにユーザーサイドから拡がっていく、新しい産業のあり方も模索しているんですね。

まだふわっとしかイメージできてないですけどね笑。
あとは、一般化されていくとドローンの操縦者が足りないんじゃないか、とか話すコメンテーターがいますけど、そんな事態にはならないですよ。
誰もが使えるようになりますから、そのくらい簡単な技術になっていきます。

— 誰もがドローン操縦者になりうる世界が来るということですね。

そうです。だから、僕が他人よりドローンがうまく操縦できるのって、近い将来そんなに意味なくなるのかなぁ、と思ってます。いいことです。

— そのとき、高宮さんは「何者」になってるんでしょうか。

そうです。だから、僕が他人よりドローンがうまく操縦できるのって、近い将来そんなに意味なくなるのかなぁ、と思ってます。いいことです。

— 誰もがドローン操縦者になりうる世界が来るということですね。

ドローンに限らず、今後は、今自分がしている仕事に新しいテクノロジーがくっついて、できることが増えていきます。職業のボーダーレス化はどんどん進んでいって、肩書きなんて意味がなくなる。そういう未来が迫っていることに敏感になって、準備しておかないと、自分が「何者」なのかすぐにわからなくなってしまいますよね。
そうならないように、常に時代を予知して、埋もれないことをする人になることを僕は心がけています。